四国で生まれ育ち、近畿、関東の居住経験有。渇水・地震・台風・計画停電を経験してきた。
それでも「備えていた」とは言えない。
経験しながら、備えていなかった。
その矛盾がこのサイトを作る動機になった。
1. 水が来なかった夏——1994年、愛媛の渇水
最初に「インフラが止まる」ことを体感したのは、地震ではなく渇水だった。
1994年の夏、愛媛県では記録的な日照りが続いた。
梅雨の降水量が平年の半分以下となり、ダムの貯水率が急速に低下した。
松山市では7月末から給水制限が始まり、最終的に124日間に及んだ。年間降水量は平年値1,303mmに対して696mmまで落ち込んだ。
蛇口をひねっても水が出ない時間帯がある、という状況を、子どもながらに経験した。
「水は当たり前に出るもの」という前提が崩れた感覚だけは、今でも覚えている。
2. 気づかなかった恐怖——1995年、阪神大震災
1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生した。
愛媛は震源から離れていたため、揺れはあったが私は気づかなかった。文字通り、寝ていて気づかなかった。
後から気づいたことがある。
自分の部屋の箪笥の配置だ。
あの揺れで箪笥が倒れていたら、ちょうど寝ている自分の上に落ちてくる位置だった。
何も起きなかったから何も考えなかった。
それが一番怖いことだと、ずっと後になって気づいた。
3. 食器が割れた昼下がり——2001年、芸予地震
2001年3月24日、芸予地震(最大震度6弱)が発生した。
震源に近い愛媛では大きな揺れがあり、食器棚から食器が落ちてたくさん割れた。
素足で歩けない状態の床、という現実をそのとき初めて経験した。
「地震の後は素足で歩くな」という知識は知っていたが、実際に床一面のガラスの破片を前にすると、スリッパがどこにあるかを考える余裕がないことも分かった。
知識と備えは別物だ。頭で知っていても、手の届く場所に用意していなければ意味がない。
4. 降りすぎた年——2004年、台風豪雨
2004年は台風が記録的に多かった年だ。
8月の台風15号では愛媛県東部の山地部で600ミリを超える豪雨となり、土砂災害と浸水被害が相次いだ。
9月の台風21号でも県内各地で斜面崩壊が発生した。
渇水の10年後、今度は水が多すぎることで災害が起きた。
足りなくても、多すぎても、水はインフラを壊す。
同じ「水」という問題が、まったく逆の形で現れることを実感した年だった。
5. 計画停電の春——2011年、東京
2011年4月、私は上京した。
東日本大震災の発生から1ヶ月後のことだ。
東京では計画停電が実施されていた。
時間帯によって地区ごとに順番に電気が止まる。テレビもつかない、冷蔵庫も止まる、街が暗くなる。
地震発生時、関西にいた私は東日本大震災の当事者ではない。
しかし上京直後に経験した計画停電は、「電力インフラが止まるとはどういうことか」をリアルに体感させてくれた。
エアコンが使えない、充電ができない、情報収集の手段が限られる——電力がなくなると、どれだけ多くのことが同時に止まるかを、身をもって知った。
6. ガスが止まった夏——2018年、大阪北部地震
2018年6月18日、大阪北部地震(最大震度6弱)が発生した。
揺れの直後から、しばらくの間ガスが止まった。
夏だったからシャワーは冷水で乗り切れた。しかし「これが冬だったら」とすぐに思った。
気温・季節・家族構成——災害時のリスクは条件によって大きく変わる。同じ「ガスが止まる」という事象でも、夏と冬では深刻さがまるで異なる。
また、地震直後は携帯電話がつながりにくい状態が続いた。
家族に連絡を取ろうとしても、なかなか繋がらない。
「緊急時に最も頼りにしていた通信手段が、緊急時に最も信頼できない」という逆説を、このとき初めてリアルに経験した。
7. 経験していないが、気になること
私が直接経験していない領域もある。
非常食・防犯・防災リュックの設計——これらについては、被災経験としての体験談はない。
しかしエンジニアとして、データを見るたびに「気になってしまう」。
- 大規模災害時の避難所で、食料が72時間以上届かないケースが実際に起きている
- 阪神・淡路大震災後、空き巣被害が前年比250%増加したというデータがある
- 防災リュックを「持ち出せる重量」で設計している家庭が、実際にどれだけあるか
経験していないからこそ、数値とデータだけを根拠に語れる。
感情や体験に引きずられず、工学的に正しい備えを提示できる——それがこのサイトのもう一つの強みだと考えている。
8. 振動工学の視点——「揺れ」を物理現象として捉える
また、私はエンジニアとして長年「振動」を専門に扱ってきた。
地震という巨大な自然現象も、工学的な視点で見れば「波」であり「エネルギー」であり、構造物との「共振」の問題だ。
地震対策における「耐震・制振・免震」の違いは、物理法則に基づいた明確なメカニズムの差として説明できる。
- 耐震: 構造を固めて耐える(剛性を高める)
- 制振: 揺れのエネルギーを吸収する(減衰を付加する)
- 免震: 地盤と建物を切り離して揺れを受け流す(周期を長くする)
世の中の防災情報の多くは「なんとなく頑丈そう」「最新技術だから安心」といった感覚的な表現に終始しがちだ。
しかし私は、振動工学の知見をベースに、「なぜその対策が有効なのか」「建物の特性に対してどの技術が最適か」を、物理的根拠をもって整理したい。
被災者としての「生活者の視点」と、振動を扱う「技術者の視点」。この両輪が揃って初めて、本当の意味で機能する「設計された備え」になると信じている。
9. このサイトで伝えたいこと
渇水・地震・台風・計画停電・ガス停止・通信障害——私が経験してきたことは、いずれも「インフラが止まる」という共通点を持っている。
そのたびに思ったのは、「備えていれば、もう少し冷静でいられた」ということだ。
水が止まる前に備蓄があれば。箪笥を固定していれば。スリッパを枕元に置いていれば。電池式のラジオがあれば。
備えとは「最悪の事態を想定して、数値で設計するもの」だ。
「なんとなく揃えた防災グッズ」ではなく、「何ワット・何リットル・何キロカロリー・何μm」という数値で選んだ装備が、いざというときに機能する。
【防災サイエンスラボの情報提供原則】
- すべての推奨に数値根拠を示す
- 過去の災害データと公的機関の資料を根拠とする
- 「なんとなく安心」「人気商品だから」という表現は使わない
- 製品スペックは必ずW・Wh・μm・IP規格・dBなどの工学単位で評価する
- 読者が自分で計算・判断できるように数式と基準値を提供する
10. 運営者情報
| サイト名 | 防災サイエンスラボ |
| ドメイン | bousaiscience.com |
| 運営者(ペンネーム) | 防災エンジニア |
| サイトの立場 | 防災の専門家ではありませんが、工学的な思考をベースに数値とデータで防災を考える生活者の視点から情報を提供しています |
| 主な経験災害 | 平成6年渇水・阪神大震災・芸予地震・2004年台風豪雨・東日本大震災後計画停電・大阪北部地震 |
| お問い合わせ | お問い合わせフォーム |
| プライバシーポリシー | プライバシーポリシー |
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すべての推奨は工学的スペックと客観的データにもとづいています。