在宅避難の電力計算:停電何日分をポータブル電源でカバーするか

防災の基礎知識

「ポータブル電源を買ったが、実際に何日もつのか分からない」——よくある疑問だ。
答えは何をどれだけ使うかの消費電力計算で決まる。
この記事では家電ごとの消費電力と在宅避難で必要な最低限の電力量を計算する。

1. 在宅避難で電力が必要なもの:優先順位で整理する

優先度 用途 消費電力(目安) 1日の使用時間(目安) 1日の消費電力量
最優先 スマートフォン充電(2台) 20W 2時間(充電時間) 40 Wh
最優先 照明(LED 8W×2箇所) 16W 6時間(夜間) 96 Wh
最優先 防災ラジオ 5W 4時間 20 Wh
高優先 電気毛布(冬季) 50W 8時間(就寝中) 400 Wh
高優先 小型扇風機(夏季) 30W 8時間 240 Wh
中優先 ノートPC 45W 4時間 180 Wh
中優先 電気ケトル(お湯沸かし) 1,000W 0.1時間(6分×数回) 100 Wh
低優先 冷蔵庫(小型100L) 約35W 24時間(常時) 840 Wh

2. シナリオ別:必要な電力量の計算

【最小構成】スマホ・照明・ラジオのみ

スマホ2台:40 Wh

LED照明×2:96 Wh

防災ラジオ:20 Wh

合計:156 Wh/日

→ 1,000 Wh容量のポータブル電源で 約6日分(変換ロス20%考慮)

【冬季・夜間暖房あり】電気毛布を追加

最小構成:156 Wh

電気毛布(50W×8h):400 Wh

合計:556 Wh/日

→ 1,000 Wh容量で 約1.5日分(変換ロス20%考慮)

→ 冬季の暖房は電力消費が桁違い。2,000 Wh以上が必要

【標準構成】照明・スマホ・ケトル・PC

最小構成:156 Wh

ノートPC(4h):180 Wh

電気ケトル(6分×5回):100 Wh

合計:436 Wh/日

→ 1,000 Wh容量で 約2日分、2,000 Wh容量で 約4日分

3. カタログ値と実効容量:変換ロスを知る

ポータブル電源のカタログに記載された容量(例:1,000 Wh)は、
バッテリー内部の電気エネルギー量だ。
実際に取り出せる電力はインバーター(DC→AC変換)や配線ロスにより約80〜85%になる。

実効使用可能電力量 = カタログ容量 × 0.8〜0.85

1,000 Wh製品 → 実効 約800〜850 Wh

2,000 Wh製品 → 実効 約1,600〜1,700 Wh

⚠ 高出力機器を使うとさらにロスが増える

電気ケトル(1,000W以上)・ドライヤー・電子レンジなど高出力機器は、
インバーターが高負荷になり変換効率が下がる。
低出力機器(LED・スマホ)中心の使用の方が実効容量を活かせる。
また、気温が低いとリチウムイオン電池の容量が一時的に低下する(冬季は10〜20%減を想定)。

4. LFP(リン酸鉄リチウム)と三元系:在宅備蓄での選択

項目 LFP(リン酸鉄リチウム) 三元系(NMC/NCA)
サイクル寿命 2,000〜3,500回 500〜1,000回
安全性 高い(熱暴走しにくい) 相対的に低い(高温時リスク)
エネルギー密度 やや低い(重くなる) 高い(軽量・コンパクト)
コスト やや高い やや安い
備蓄向き ◎(長期保管・繰り返し充放電) △(サイクル劣化が早い)

在宅避難用に長期保管・繰り返し使用を想定するならLFPを選ぶべきだ。
年に数回しか使わないとしても、サイクル寿命が長いほど10年単位での維持コストが下がる。



5. 容量選定の目安:家族構成と停電想定日数から決める

想定停電 家族構成 推奨容量(目安) 主な用途
3日以内(台風・短期) 1〜2人 500〜1,000 Wh スマホ・照明・ラジオ
3〜7日(中期) 3〜4人 1,000〜2,000 Wh 上記+PC・ケトル
7日以上(長期・冬季) 3〜4人 2,000 Wh以上 上記+電気毛布・小型冷蔵庫
医療機器使用あり 問わず 2,000 Wh以上+ソーラー充電 CPAP・在宅酸素等の継続稼働

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